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翌日。
学校が終わると、そのままピザ屋へと足を運んだ。
大きく深呼吸をして店の扉を開く。
「失礼します!」
「はーい。少々お待ち下さい」
丁寧な声が店の奥から聞こえた。昨日の電話に出た女の人だ。声から想像する限り、綺麗な人だろうと勝手に思い込んでしまう。ドキドキしながら待っていると、現れたのは大きなタヌキだった。いや、間違えた。小柄でデブ……ふくよかなメスブタ……えっと、笑顔の素敵な女性だ。
「あの……アルバイト希望の……」
「ああ、面接ですね。店長、面接の子が来てますよ!」
急に声色が変わり、デ……ふくよかな女性は子供っぽい声を上げる。すると、事務所らしき場所からボソッと声が聞こえた。
「……忘れてた」
……
……
おい! 今、確実に忘れてたって聞こえたよ!?
「……どうぞ」
不安しかない。本当にこんなところでアルバイトをして大丈夫なのだろうか?
「失礼します」
最悪だ。事務所内には私の嫌いな煙草の匂いが充満している。店長はボケが始まった汚いオヤジなのかも。そう思っていたのだが……
「ごめんよ、忙し過ぎてすっかり忘れてたよ。アハハハハ。あっ、そこに座って。それと、履歴書を見せて貰えるかな?」
現れたのは予想よりも遥かに若々しい店長だった。疲れた顔をしているが、二十代後半に見える。
「長谷川未来、十五歳か……若いなあ。俺と一回りも違うじゃないか」
一回りと言うと、この人の年齢は二十七歳なの? 店長なんて四十過ぎたオジサンばかりだと思ってた。
「勿論、バイクの免許は持って無いからインストア希望だよね」
「インストア?」
「店内スタッフの事だよ。ピザやサイドメニューを作ったり、電話対応するのが基本業務さ。しかし……欲しいのはデリバリーなんだよな」
デリバリーは何となく分かる。バイクでピザを届ける人だ。でも、十五歳の私ではバイクに乗るどころか免許の取得すら出来ない。
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