万全の準備

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 十月も半ばになり、秋を感じさせる冷たい風と共に冬服へと衣替えした。  今日のアルバイトは休みだけど、いつも通り店長の顔を見る為に店へと足を運ぶ。 「未来、クリスマスはシフトに入れよ」  顔を合わせるなり、すぐに仕事の話だ。 「別に構いませんが、まだ二ヵ月も先ですよ」 「二カ月しか無いんだよ。クリスマスはピザが最も売れる日だ。イブである二十四日は夜が、二十五日は昼が戦争に感じる程だぞ」 「お盆でも戦争でしたけど……」 「お盆よりも売れるさ。クリスマスは特別だ。この日だけはバイクの数も増やして対応する。だけど……」 「だけど?」 「お盆と違ってスタッフがシフトに入るのを嫌がるんだ」  ああ、それは分かる。クリスマスは特別な日。素敵な彼氏や彼女と一緒に過ごしたい……そう思うのは当たり前だ。誰もがこんなに早くシフトを決めたくない。彼氏や彼女がいなくても、ギリギリまで夢を見たいじゃないか。  しかし、私にとっては素敵な人が店長なのだから、シフトに入るのは必然と言える。里子さんも彼氏が同僚なのでシフト入りは二人揃って確定だ。 「勿論、私はシフトに入りますよ」  この時は軽い気持ちで考えていた。まさか、あんな事になるとは思ってなかったからだ。
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