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「暫くすると店長が来て、ずっと頭を下げてた。それでも車の運転手の怒りは収まらなくて、罵詈雑言を浴びせられてたんだ。それで終いには土下座しろって言われた。いい加減、俺も頭に血が上ってさ……逆切れしそうになったんだけど……店長に止められて……」
聞きたくない。店長ならきっと……
「店長は土下座したんだ。冷たいアスファルトの上でだぞ。頭を地面に擦り付けて、何度も何度も謝っていた……悪いのは私ですって……だから俺も、頭を下げたんだ。それで終わったんだけど、店長は怒らなかったんだよ。逆に、焦らせてすまないって……いつも通りに仕事をすればいいって……」
分かっている。店長ならそうするだろうって分かっていた。でも、仕事ってそんな事までしないといないの? 店長が土下座しているところなんて想像したくないよ。
「じゃあ、俺は仕事に戻るよ」
休憩に入って、まだ五分も経っていない。少しでも店長に謝罪したいのだろう。長尾君はそういう男なんだ。
私はモヤモヤした気持ちで仕事を終えた。
明日のクリスマスも仕事だ。気持ちを切り替えないとミスをしてしまう。そう思っても帰ってから殆ど寝られず、日が昇るくらいの時間には店に来てしまった。
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