クリスマス

4/6
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「暫くすると店長が来て、ずっと頭を下げてた。それでも車の運転手の怒りは収まらなくて、罵詈雑言を浴びせられてたんだ。それで終いには土下座しろって言われた。いい加減、俺も頭に血が上ってさ……逆切れしそうになったんだけど……店長に止められて……」  聞きたくない。店長ならきっと…… 「店長は土下座したんだ。冷たいアスファルトの上でだぞ。頭を地面に擦り付けて、何度も何度も謝っていた……悪いのは私ですって……だから俺も、頭を下げたんだ。それで終わったんだけど、店長は怒らなかったんだよ。逆に、焦らせてすまないって……いつも通りに仕事をすればいいって……」  分かっている。店長ならそうするだろうって分かっていた。でも、仕事ってそんな事までしないといないの? 店長が土下座しているところなんて想像したくないよ。 「じゃあ、俺は仕事に戻るよ」  休憩に入って、まだ五分も経っていない。少しでも店長に謝罪したいのだろう。長尾君はそういう男なんだ。  私はモヤモヤした気持ちで仕事を終えた。  明日のクリスマスも仕事だ。気持ちを切り替えないとミスをしてしまう。そう思っても帰ってから殆ど寝られず、日が昇るくらいの時間には店に来てしまった。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!