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「店長……おはようございます……」
「うわっ!? 驚かすなよ。こんな早い時間にどうした?」
「店長……昨日……」
「昨日? ああ、あの事か。長尾に聞いたんだな。真冬の道路で土下座はきつかったぜ」
笑いながら話すが、とても辛そうだ。目の下の隈が余計に疲労を感じさせる。
「……なんで……そこまでするの?」
「簡単だよ、仲間の為だ。それに悪い事をしたら謝るのは基本だろ?」
納得出来ない。信号無視をしたのは長尾君なのに、何で店長が……
「相変わらず顔に出てるぞ。納得いかないか……それは、俺が怒らなかったからだな。場合によっては怒るさ。上司にも本気で怒れと言われた。当たり前だよ。一歩間違えば命を落とし兼ねない内容だ。でも、人は信じられない行動をする時がある。後から振り返ると、何であんな事をしたんだろうって。もし長尾が時間短縮の為に信号無視をしたのであれば怒ったさ。あいつはそんな事をしないって分かるだろ?」
確かに、長尾君はそんな事をしない。
「俺が現場へ着いた時には、長尾は十分に反省していた。今にも泣き出しそうで、店長を呼ばないとって呟いていたんだ……あいつを見た時、怒るよりも俺の配慮が足りなかったんだって感じた。新人なのに他のメンバーと一緒の仕事量をさせてたんだ。本当に怒られるべきは俺だよ。長尾は二度と同じミスをしない。あいつの目がそう言っていた」
言いたい事は分かった。私たちの事を部下やアルバイトではなく、仲間と言う店長だからこその答えなんだろう。でも私は……店長の体が心配なんだ……。
「分かりました。店長は寝て下さい」
「えっ?」
「私が仕込みを全部やります!」
無理やり店長を寝かしつけ、すぐに大量の仕込みを始める。暫くすると里子さんが来て、何も言わずに手伝ってくれた。
一段落して事務所を覗くと、机でうつ伏せて寝る店長が見える。すると突然、店の入り口から大きな声が聞こえてきた。
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