22人が本棚に入れています
本棚に追加
「土日はシフトに入れるの?」
電話で伝えたはずだが、もう忘れてしまったのだろうか?
「特に予定が無ければ入れます」
「そっか。じゃあ、特技はなに?」
「特技? えっと、その……」
「長所でもいいよ」
「長所? 長所は……いつでも元気なところです」
……
……
なんだ、この間は!? なにか反応してよ!
「成程ね。確かに声も大きいし、見た目は元気そうだな。じゃあ、志望動機を教えてくれる? この店でのアルバイトを希望する理由は?」
「家が近いからです。後は……お兄ちゃんがピザを好きだから、安く買えたら嬉しいな……なんて……」
しまった。思った事をそのまま口にしちゃった。呆れて、店長がキョトンとしてる。
「アハハハハ。未来は面白いな」
良かった、笑ってくれた。それより、もう未来って呼ぶの? フレンドリー過ぎない?
「いいよ、採用だ。俺は一週間前に別の店から異動してきたんだけどさ、この店は雰囲気が暗いから変えたいんだよね。新人同士、お互いに頑張ろうぜ」
一週間前に来たばかりなの? だからポスターも前の店長の名前だったのか。しかし、こんな簡単に採用されるとは思って無かった。そして……店長の笑顔が可愛く見えて、不覚にもドキッとしてしまった。
「必要な書類を言うからメモしてね。給料の振込先になる通帳のコピーと、印鑑と……」
必死にメモを取る間にも店長の顔をチラ見する。それなりに好みの顔だと今更気付いた。年上好きの私にとって十分許容範囲だ。まあ、煙草吸ってる人を彼氏にするつもりは無いけどね。
「全部書類が揃ったら持って来て。それからシフトを決めよう」
「はい、頑張ります!」
「それと……おーい、里子! あの新作ピザ、まだ余ってたろ? 未来に持って帰らせろ」
「はーい!」
先程のふくよかな女性の声が聞こえた。そうか、里子さんって言うのか。
「これ、メニューに載ってない新作のピザなの。温かいうちに食べてね」
「ピザ好きの兄貴と食べて、感想を聞かせてくれよな」
笑顔で手を振る店長と里子さんに頭を下げ、まだ温かいピザを片手に帰宅した。
最初のコメントを投稿しよう!