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数週間後――
人の死というものは、案外と薄情なもので、余程近しい人以外、さほど影響を与えないのだと、詩織は身をもって感じていた。
クラスメイト達も、数日程度は彼女の死を悔やみ、悲しみの色に染まっていたけれど、学生の時間の流れは早い。
定期考査や学校行事に、部活に進路。
考えることも、やることも目白押しで、藤崎の事など、たまに思い出す程度で、皆、何事もなかったかのように、それぞれの生活を満喫していた。
近しい間柄であった筈の阿川や、そのグループの人達でさえ、平気な顔をして過ごしているどころか、笑顔すら浮かべている。
教室の片隅から、相変わらず華やかな彼女達を盗み見していると、不意に阿川と目が合ったような気がした。
別に咎められるようなことなどしていないのに、何故かドキリと心臓が大きく跳ね上がる。
咄嗟に視線をズラし、何でもないようなフリをした後、再び、阿川の方を見れば、彼女もまた、友人達とのお喋りに夢中になっていた。
それが詩織と阿川との距離。
互いに『別世界』の住人と認識し、決して交わることはないのだと改めて突きつけられた気がしたものの、それぐらいハッキリと境界線を引いてくれた方がむしろホッとする。
あんなに仲良く見えていても、その場から居なくなれば、居ない事に慣れてしまう。
彼女達がいう「友達」なんていうものは、結局は表面上の付き合いでしかない虚しいものなんだろうという、意地の悪い考えを打ち消し、放課後、美術室へと向かう。
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