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「のり…」
庸一が私に話しかけようと一歩踏み出すと耳障りな黄色い声がこだました
「庸一様~」
「王子様~」
何だろうと振り返ると何人かの女の子が勢いよく庸一を取り囲んだ
「また同じ学校で光栄ですぅ」
「またお菓子食べていただけますかぁ?」
くねくねと甘ったるい声で擦り寄る女の子達に庸一は答えた
「ありがとう、こちらこそ光栄だよ。よかったらまた店に遊びに来てね」
ニッコリときれいな笑顔はすごく爽やかですごく嘘臭い
さっきは庸一だったのに、今は全く知らない顔になっていた
「私…行くね」
返事も待たずにスタスタ歩きだした
「えぇ転ばない様に気をつけてくださいね」
私には違和感しかない庸一が女の子達には素敵な王子様に見えるらしい
私は自分を偽る人間が嫌いだ
自分を偽るといつしか自分を見失ってしまう
そんな人間に人様を笑顔にする煎餅は作れない
ずっとそうやって育てられたから
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