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アリスは面倒くさそうにぐちぐち言っていたが、結局はそれをする。
「仕方ないなー…」
そう言いつつもそれはもう行われている。
「あなた達を誘いましょう。不思議な世界。アリスの不可侵の世界へ。」
周りの景色が歪み始める。階段はゴムのように柔らかくなっていき、その形を溶かしていく。
「ようこそ。アリスの世界へ。」
少し瞬きをすればもうそこは、翔が知っている場所ではなくなっていた。
可愛らしいぬいぐるみが闊歩し、絵本の中で見るようなお菓子の家。
そこはもう、翔と化け物とアリスしか居ない世界。現実ではなくおとぎ話の世界になっていた。
「これで、心置き無くやれる。だからさぁ、そんな人の中に篭っていないで姿を表わせよ」
翔のその呼びかけに反応するように、あと男の周りに真っ黒な泥が現れる。
その泥は男を包み。徐々に肥大化していく。形が整われ、その本性を見せる。
「ピシャァァァァ!!!!!」
甲高い遠吠えをしながら見せたその姿は巨大なカエルだった。ただのカエルでは無い。
純白な鎧を着たカエルでその中身はほとんど見えていない。
見えるとすれば、その特徴的な足だけだった。そして、そのカエルの上に豪華に飾られた椅子に座っている何かがあった。
シルエット的には人のようなのだが、泥のようなものでハッキリと見ることは出来ない。
「頑張ってね。お兄さん。あれはちょっと強いかもよ。」
「ふん。このぐらいなら平気さ。」
翔は豹変している腕に力を込める。
「来たら来たれ来たれ。汝の力は今ここに証明される!」
その腕からあのカエルと同じように泥が吹き出した。そしてその泥は槍のような物に変わった。
「今回は槍か…アリス。お前の気まぐれも大概にしてくれ」
そうは言いつつも、すぐさまに臨戦態勢に移る。担ぐように槍を持ち体制を低く保つ。
そして、お互いに動き出す。
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