第1話

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アリスは面倒くさそうにぐちぐち言っていたが、結局はそれをする。 「仕方ないなー…」 そう言いつつもそれはもう行われている。 「あなた達を誘いましょう。不思議な世界。アリスの不可侵の世界へ。」 周りの景色が歪み始める。階段はゴムのように柔らかくなっていき、その形を溶かしていく。 「ようこそ。アリスの世界へ。」 少し瞬きをすればもうそこは、翔が知っている場所ではなくなっていた。 可愛らしいぬいぐるみが闊歩し、絵本の中で見るようなお菓子の家。 そこはもう、翔と化け物とアリスしか居ない世界。現実ではなくおとぎ話の世界になっていた。 「これで、心置き無くやれる。だからさぁ、そんな人の中に篭っていないで姿を表わせよ」 翔のその呼びかけに反応するように、あと男の周りに真っ黒な泥が現れる。 その泥は男を包み。徐々に肥大化していく。形が整われ、その本性を見せる。 「ピシャァァァァ!!!!!」 甲高い遠吠えをしながら見せたその姿は巨大なカエルだった。ただのカエルでは無い。 純白な鎧を着たカエルでその中身はほとんど見えていない。 見えるとすれば、その特徴的な足だけだった。そして、そのカエルの上に豪華に飾られた椅子に座っている何かがあった。 シルエット的には人のようなのだが、泥のようなものでハッキリと見ることは出来ない。 「頑張ってね。お兄さん。あれはちょっと強いかもよ。」 「ふん。このぐらいなら平気さ。」 翔は豹変している腕に力を込める。 「来たら来たれ来たれ。汝の力は今ここに証明される!」 その腕からあのカエルと同じように泥が吹き出した。そしてその泥は槍のような物に変わった。 「今回は槍か…アリス。お前の気まぐれも大概にしてくれ」 そうは言いつつも、すぐさまに臨戦態勢に移る。担ぐように槍を持ち体制を低く保つ。 そして、お互いに動き出す。
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