第46の扉「灰をかぶったネコの記憶」

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一 夢の国  執行猶予、三か月……と決めたのが、私の誕生日よりすこし前のことだから、その期限が切れるのは十月の半ばということになる。《ヘーゼルナッツ》と名乗る誘拐魔の事件がしだいに世間の話題から遠ざかっていくころ、猶予されてきた私の「勤め」が執行されるときが近づいていた。 「動画と写真を織り交ぜた、ヌードのコラージュ的な作品を……」  たしか、あのとき、広夢はそんなことを言った。そう言われたところで、彼がどんな作品をイメージしているかは分からない。とにかく、それは「ヌード」だ。私をヌードモデルとして自分の作品を製作したい。そしてそれを芸術系の大学を受験する際の、アピール材料にしたい……それが彼の思惑だった。  ヌード、と言って、彼が、どの程度のものをイメージしているかも分からない。でもまあ、彼がマジメな思いで取り組む作品、その役に立てるなら……許せる範囲なら……と、撮影のモデルになることにOKしてしまった。そしてそのとき、私は彼に、言ったのだ。 「執行猶予、三か月」
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