第46の扉「灰をかぶったネコの記憶」

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二 三十文字  ヌード撮影をするにあたって、私が広夢に出した、もうひとつの条件があった。それは、「美鈴さん」に撮影現場に同席してもらいたい、ということだった。美鈴さんというのは、私と広夢の高校の同級生だ。とくに、彼……広夢の映像活動と美鈴さんとはフシギな縁があって、高校二年のときには彼が撮る映画の衣装を美鈴さんが担当したし、高三の文化祭には、美鈴さんがデザインした服の写真撮影を広夢がやることになった。そのときも私は「モデル」として駆りだされて、広夢がかまえるカメラの前に立ったのだった。だから、美鈴さんなら、広夢の撮影にも慣れてるし、私も気心が知れている。それに……広夢と付き合うことになったものの、どうも彼には、女のコの気持ちを分かってくれてるとは思えないところがある。近ごろはだいぶ変わってきたかなとは思うけど、やっぱり美鈴さんもいてくれたほうが心強い。そのほうが彼も撮影に集中できると思うし……そんなふうに思ったのだった。
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