第46の扉「灰をかぶったネコの記憶」

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 美鈴さんは、高校を卒業後、服飾系の専門学校に入学した。イトコのお姉さんに、映画やドラマなんかで「ヘアメイク」という仕事をしている人がいて、そうした影響もあって、ずっと服飾に興味があったみたいだ。そのヘアメイクさんは、舟木久美さんというのだけれど、これまたフシギな縁で、何度か、久美さんに月渚の髪をカットしてもらったことがある。いちどめは、月渚が自分で髪を切るのに失敗して、カッパみたいなヘア・スタイルになってしまったとき。つぎは、結婚式にむけて伸ばしていた髪を、ばっさりショートにしたとき。そんなこんなで、月渚、広夢、美鈴さん、私の四人は、誰かが誰かにお願いごとをして、誰かが誰かにそのお礼をして、ということが、ぐるぐるめぐって、もはや、どういうことでそうなったかが、よく分からないぐらいになっていた。今回も、広夢から美鈴さんに撮影の声をかけて、ふたつ返事で「OK」というアンサーをもらったそうだ。
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