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「ここだ・・・!!ここがあの猟犬セルパの探していたという、アライグマ親子が居る筈の場所の終点だ。
この街にアライグマ親子が居る筈だ。」
思えば、犬のキィオは此処へ来る前に6車線の高速道路を死物狂いで渡り、途中で腹がへってゴミ箱を荒らしたら地元の犬回収業者に捕まえられそうになったり、どっかのヤンキーにバスケのボールにされてダンクされたり、追いかけっこしてた●ムと●ェリーに踏まれて身体がペラペラになったり散々だった。
「よし、探そう。」
ビーグル犬のキィオは大きく深呼吸をすると、鼻を地面に近付けて・・・
がりっ。
「あいてててて!!」
キィオは地元に生息するリスに、鼻をかじって悶絶した。
「何だよこのイタズラリス・・・」
「あら?懐かしい匂いだねえ?このわんこ。」
目の前に、優しい目をしたアライグマが鼻をフンフンとキィオの身体を嗅いでいた。
「まさか、あんたもにっぽんから来たの?」
・・・・・・
「そうなの。で、君はその『名うての外来種駆除のプロフェッショナル』の猟犬の刺客として来ちゃった訳ね。
本当にしつこいわねえ?執念深いというか。」
「でも、自分は此処で海を渡って無事に本来の生息地に帰ってこられた事を知って・・・自分は・・・うううう・・・感動で・・・涙が止まりません・・・うううう・・・あおーーーーん!!」
「よしよし、泣かないで。」
アライグマの母は豚泣きするキィオの涙を前肢の指で拭ってあげた。
「で、アライグマ親子のうち、子と雄は?」
「我が子は、皆ここで独立して其々達者に暮らしてるの。
でも、パパはここに来たとたん、交通事故で死んじゃった。」
「おかわいそうに。」
キィオは思わず母アライグマの頬に優しくキスをした。
・・・セルパよお、やっぱりこのアライグマを連れて行けないよ・・・
・・・やっと掴んだアライグマの幸せを、自分はぶっ潰すことなんか出来ないよ・・・
「わんちゃん?」
「なあに?アライグマさん?」
「あんたの名前は?」
「『キィオ』だけど?」
「私の名前は『エマー』。にっぽんに居たとき、餌をくれた人間の少年が付けてくれたの。」「ふーん。」
アライグマのエマーはそこまで言うと、にっぽんからここ米国まで渡ってきた辛い長旅を思い出して、うっすらと涙を溢した。
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