Fragrant②

4/6
前へ
/34ページ
次へ
「臭くないか?」 「大丈夫。口元にハンカチ当ててるから」 更衣室の狭いロッカーの中に、俺と今野は隠れている。 俺のロッカーの目の前という、絶好ポイントで犯人を待ち伏せることにした。 「犯人来るかな?」 「来る!今回は、俺が愛用している、ヘアバンドとリストバンドを入れといたからな」 バスケの練習で使用しているため、犯人も口から手が出るほど欲しいものだと勝手に思っていた。 「それは……、欲しいな」 「だろ」 授業中だから、更衣室はシーンとしていた。 ドアの向こうでは、運動を楽しんでいるクラスメイトの声が聞こえてくる。 「…なぁ。沢村は、俺のこと気持ち悪くないのか?」 「はぁ?なんで??」 「ホラ。俺って匂いフェチだろ?いい匂いだからって男の俺に抱きしめられて、匂い嗅がれるのって嫌じゃないか?」 「別に。今野に抱きしめられながら匂いを嗅がれるのは、嫌じゃねぇよ」 俺の言葉に対して今野が何かを言う前に、更衣室のドアが開けられた。 「来たっ…」 小さい声で、今野に知らせた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加