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「お邪魔します」
今野の家は、いつも綺麗だ。
玄関なんか、清潔感漂っていて、無臭だった。
「今日、母さん泊まり込みで仕事だから」
靴を脱ぎながら、今野が言った。
「あっ、今日、一人きりだったんだ」
今野は子一人母一人の母子家庭だった。
「夕飯どうする?」
「簡単なのでいいなら、俺作るけど?」
「マジ?!」
驚きながらも、今野の手作り料理が楽しみだった。
今野の手料理は、薄味のチャーハンだった。
塩味で美味しかった。
チャーハンを食べながら、俺は、気になっていたことを直球で訊いてみた。
「調香師のバイトって大変なのか?最近、元気ない気がするんだけど…」
「えっ…、そんなことないよ」
今野は、笑ってはいるけど、決して俺の顔を見ることはしなかった。
「言いたくないならいいけどさ…。これでも、心配しているんだぞ。話を聴くぐらいなら、俺でも出来るし…なぁ?」
「……ありがとう…沢村」
今野は、お礼を言いながらも、やっぱり俺の顔をみることはなかった…。
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