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落ち着いた今野は、正座をして話し始めた。
「ゴメン。最近、我慢していたのが、今になって爆発した。本当にゴメン…」
「うん…。まぁ、最近、匂い嗅いでなかったから、わかるが…。なにも、あんな場所の匂いを嗅がなくても…」
「いや。俺は前から首筋や脇、沢村のいろんな場所の匂いを嗅ぎたかった。それを、いつも我慢して髪の匂いを嗅いでいた。…違うな。髪の匂いを嗅ぎながら、欲を出して他の場所も嗅ぎたくなっていった」
今野は、冷静に自分の過去と性的嗜好を俺に話し始めた。
「俺は、好きな人の匂いは、どんな部位でも嗅ぎたくなってしまうんだ。それが原因で、何回も別れたことがある。『気持ち悪い』、『私の匂いだけが好きなんでしょ?!』と、今まで付き合ってきた女性に言われてきた。
だから、自分の性癖は隠して生きていかなきゃいけないんだ、と、諦めていた。
でも…。
沢村は、こんな変人の俺を差別しなかった。盗難事件のときも、正直、疑われたときは焦った。でも、沢村は俺を信じてくれた。『今野はそんなことしねぇよ』という、一言が嬉しかった。
俺は、沢村が好きだ」
今野が、俺をまっすぐ見る。
最近、ずっと顔すらみてくれなかった今野と目が合い、俺は、恥ずかしくなって目を背けた。
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