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「はよっ。また、やってんのか」
今野が、沢村の匂いを嗅いでいるのは、見慣れた光景だ。
「はよっ」
「そんなに沢村の髪って匂いするかぁ?臭いんじゃね??」
「失礼な。毎日、髪を洗っているっつーの」
「そうそう。沢村独自の匂いは爽やかさに透明感があって、花に例えるとスズランなんだけど、シャンプーした後は――――…」
それから10分間、今野は沢村の匂いについて語り続けた。
「わーった、わーった。沢村の匂いが素晴らしいことはわかったから、思う存分、勝手に嗅いでてくれ」
身長も高く、顔が整っているだけに、匂いフェチシズムの今野は、異質な者として、扱いを受けていた。
でも、本人はまったく気にしておらず、沢村の匂いを嗅ぐのを止めなかった。
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