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 おじさん……?  わたしは首を傾げた。母からは、自分には身寄りはないと聞かされていたから。突然、叔父だという人が現れても、ピンと来なかった。 「彼は広野巧さん。君のお母さんの弟さんだよ。随分と若いけど、お母さんとは年の離れたご姉弟だったようだね。このことはこちらでもちゃんと調べて連絡して来てもらった身元引受人だから、正真正銘、君の叔父さんだよ。安心していいよ」  五十代くらいの温和そうな警察官のオジサンがそう話してくれて、警戒心でガチガチになっていたわたしの心は少しだけ解れた。 「おじさん……」  改めて、確認するように口にしたわたしの声に呼応するように頷いた彼を見た時、緊張が急激に緩むのを感じた。何となく、自分に近しい人を見つけた。そんな安堵だったのだと思う。  何の前触れもなく真っ暗闇に独り放り出されたわたしにとって、彼は、温かな光の射し込む場所へと引っ張り上げてくれた人だった。  膝の力が抜けて崩れ落ちそうになったわたしを、彼はその腕でしっかりと受け止めてくれた。 「泣いていいんだ、莉羅」  母の死に顔を見た時は、突然襲ったショックが大き過ぎて泣く事が出来なかった。けれど彼の腕の中に抱かれた瞬間、凍結し、停止していたような心が一気に融解した。
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