血の文化祭

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高校の文化祭。学生達が必死に……もしくはいい加減に考えた出し物に取り組んでいる中、僕はポケットに忍ばせたナイフを握りしめて校庭を歩く。 青春が疎ましかった。 自宅の前で交わされる青春の日常達…… 僕はそれをいつも、二階の自室から眺めては怒りに満ち溢れていた。 その怒りとは何なのか? きっとそれは、僕が青春を謳歌できなかったために産まれた嫉妬なのだろう。 友達も出来ず、彼女なんか当然居なかった。近寄ってくるのは頭の悪い不良達。 その不良達に囲まれて僕はイジメられ……そして高校を辞めて引き籠りとなった。 その通っていた高校というのが、自宅の前にあるから恐ろしいものだ。 高校を辞めてから十数年が経過し、無職歴も同じ年数を辿る。 毎日思うのはイジメられていた高校時代。憎むべき生徒。頼りない教師。謳歌できなかった青春。取り戻せない卒業証書。自分の存在意義とはなんなのか?自分は世の中に何の影響も与えないクズ…… 誰が悪いのか?わからない。 教師達なのか、不良達なのか、それとも弱い僕か…… だからこれから起こる悲劇も、誰が悪いのわからないのだろう。 逆恨みと思われようと、どうでもいい。 とにかく今この瞬間に行われている青春をぶち壊したい。 それだけを僕は切望する。 さて……では、誰を殺そうか? 僕がターゲットを選んでいると、当時僕をイジメていた不良に似た集団が居た。 よし、彼らにしよう。 僕は不思議と冷静に彼らのあとをつけた。 ナイフを握る手が汗ばむ。 彼らは一階の端っこにある使われていない教室へ入った。 昔の不良の溜り場は、今も不良の溜り場となっている。 僕は少し間を置いてから教室に入ろうとした……その時だ。 僕を追い越して一人の教師がその教室へと入って行った。 チラっとその教師の横顔が見えて、僕は「飯田先生……」と小さく声を漏らす。 飯田先生は教室に入り、「何度言ったらわかるんだ!!」と叫んだ。 「ここは弱い者イジメをする場所じゃないんだぞ!!」 不良達は不快な顔をして教室から飛び出す。 そのあとに、飯田先生はメガメをかけた気弱そうな男子生徒と廊下へ出て来た。 僕は「あの……」と無意識に声をかける。 「あぁ……」と飯田先生は頭を下げた。「お恥ずかしいところをお見せしました」 「一般客の方ですよね?どうか文化祭を楽しんでいってください」
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