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世に天才と称される者は
大様にして時に暴力的なまでの狂気を帯びているもので、
倫理や道徳
そして常識や固定概念に囚われず、
自分だけの概念や価値観でもって
独自の世界を形成し、
凡人では感知しえない領域の森羅万象を
具象化しているのだという。
だがそれも経験が伴わなければ
拙い妄想の産物に過ぎず、
いくら奇抜で幻妖であっても
それは視覚的に訴えるのみであり、
頭の中だけでなく
行動によって自らの狂気を体現し得た者にしか
人の奥底に眠る激情を呼び起こすことはできない。
イデオロギーで築かれた地層に埋もれた
化石では燃料にしかなれず、
カビの生えた聖書を崇め、
スモッグに覆われた社会通念の中で
暮らしていては辿り着けない世界。
道理を逸脱し、
人々の理解の外に飛び出した
異端からこそ新たなる芸術は生まれるのだと
部屋に飾られた絵の群れに
視線をさまよわせ、
医者は大仰に、
そして声高に語った。
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