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うぶめは子どもを食らうのか(6)
その日、慶次が帰宅したのは午後十時を回った頃。
かすみは自分の部屋で、学校帰りに結局購入した敦也のインタビュー記事の掲載されている情報誌を読んでいた。
詳しく目を通してみると、インタビュアーが今度テレビの取材を受けて、そのときに娘さんとのワンシーンもあるとか、という話しをしていたことには驚いたが、すぐにこの雑誌の取材を受けたときにはまだ誘拐はされていなかったのだと思い直した。
さすがにテレビ取材は断るしかないだろう――そう思いながら、かすみは慶次に進捗を聞くために五階の事務所を尋ねた。
「慶次さん、お疲れさまです。どうでしたか」
慶次は疲れ切った表情で椅子に座り、デスクに両足をのせていた。
「話しはできた」
「……あんまりよくできなかったんですか」
「娘を返す気はないようだ。だが、返す意思がないということはまだ娘は生きているということでもある」
「それはたまたまなんでしょうか。それとも……」
「そこまで詳しいことを話せるんだったら展望が……。とりあえず、また明日も行ってみるつもりだ。完全に拒否されてもいないみたいだしな」
「……でも、降矢さんが言われた通り、菜穂ちゃんを誘拐した妖怪はやっぱりうぶめだったんですね」
「そうだな。素人の目もそう馬鹿にはできんな」
慶次は乱暴にネクタイを緩める。
「降矢さんには今日のことは……?」
「伝えた。相当、かっかしているな」
「テレビの取材のことは断るんでしょうか」
「……取材?」
慶次は初耳らしい。
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