スズメの冒険

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スズメの冒険

 2009・6・30 火 雨のち晴れ  4月から2ヶ月勤務した派遣の仕事が今日で終わる。北夕凪にあるヨネクラって精肉会社だ。  最初はハム部で働いていたが、途中からウィンナー部に配属された。  ウィンナーの下手切りがメインの仕事だ。  ナカナカスムーズに出来ず苦労したがやれることはやった。  下ネタ好きの高橋さん、思いやりがあって最後のヘタ切りの仕事をやっているときに「体に気をつけて頑張れよ?」って言ってくれてジーンときた。 「分かりました、ヘタ切りし過ぎて寝たきりにならないように注意します」  ペルーから来た佐藤さんがヘッヘッと笑ってる。 「キムラクン、オモロイネ?」  優しい笑顔だ。最初に握手をした。  人間はいろいろな人の知識や仕草を吸収してデカクなっていくんだな?アッチの方も随分でかくなったもんだ。  川を眺め夕凪大橋を渡りながら思った。  僕はスズメだ。名前はジローだ。屋根の上で歌を歌う。  パパのタロー、ママのハナコ、そして僕。  パパは言った。 「人間に近づくな?あいつらは鬼だ!おじいちゃんは鉄砲に撃たれて死んだんだ」 「そんなぁ、病気で死んだんじゃなかったの?」 「あれはまだおまえが小さかったからなぁ……とにかく、人間に近づくな?」  僕は急に旅に出たくなった。  横浜ってところにやって来た。  赤レンガに中華街、マリンタワー。  キレイなところだな?  外人墓地のあたりを飛んでいるときだった、1羽のカラスが襲いかかってきた。 「フンッ!小賢しい奴め!」 「やめてよ~!」  僕は何とか振り切ったが、バランスを崩し落ちてしまった。どこかの学校に茂みのなか。 「痛いよ~誰か助けてよ~」  そのときヒトリの少女がやって来た。  ヤバイ!人間だ!  僕は恐怖のあまりに目を閉じた。 「可愛そう、今助けてあげるね?」  僕は驚いて目を開けた。 「私、ミク。よろしくね?」  ミクはランドセルを背負っている。  小学5年生らしい。  僕は本牧にあるミクの家にやって来た。  手当てをしてもらい、水も飲ませてもらった。  人間にも優しい人がいるんだな?  僕は複雑な気持ちになった。  ミクの両親は仲が悪く、離婚寸前だったが僕が来たことにより少しだけ仲良くなった。 「君のおかげだよ?ありがとうチュン君」  僕はジローなんだけど、まぁいいか?  そしてある朝…………
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