つらすぎる現実

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つらすぎる現実

 2009・7・1(水)  今日は仕事を休んで朝霧市のがんセンターに出かけた。叔父は小説家だ。  僕がポエムを書きはじめたのも叔父の影響だ。  母の運転するフィアットの窓から入道雲が見える。ガンって言葉は本当にイヤだ。  空気が重いからバカな話をして紛らわした。  叔父さんの顔を見た瞬間、言葉を失った。  痩せこけ、抗がん剤により髪は抜け落ちてしまった。僕が小学生の頃はアフロヘアーにしてたりして、あぶ刑事ゴッコとかやったんだ。  何気ない言葉が傷つけてしまうんじゃないか?そう、思うと何も言えなかった。ポエムや童話が書かれたノートを持ってきたが、そんな気分にはなれなかった。  泣いたら叔父さんに悟られちゃうんじゃないか?と、思って泣かなかった。  叔父はモルヒネによって記憶が薄れている。  食事も喉を通らないそうだ。  なんで!?もっといっぱいしゃべりたかったよ!  しゃべれるよ!絶対しゃべれるよ!神様、助けてあげて!?  昼は軽食屋でパスタを食べたが味がしなかった。しかも、店員が超カンジワル!  カンファレンスが行われた。  医者が咳払いして言った。 「抗がん剤の効き目は特に見られませんでした」  目の前の現実のつらさに目眩を覚えた。  昨日まで母からは鬱病だと聞かされていたのでショックが大きかった。  肺癌が脳にまで転移しており、ボンヤリしたり幻想を見るようになっていたのだ。  トイレに駆け込み背中を震わせて泣いた。  家に帰ってきて『子ぎつねヘレン』のDVDを見た。大沢たかおや松雪泰子が出ている。  耳と目が不自由なヘレン、太一少年とともに生き鳴くことやミルクが飲めるようになる。  ヘレンは手術をしても助かるパーセンテージは0に近い。けれど太一たちは安楽死はさせたくない。  人も動物も一緒なんだ。  涙が溢れた。  叔父さん、死なないでよ?
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