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数度かぶりを振ってからスギサワが言う。
「ううん。だって、私がそわそわしてるナオフミ君を見て、珍しいなぁってなんだかおかしくなっちゃって、つい笑っちゃったから……ぁ」
おいおい言ってから恥ずかしがるなよ。
そんな顔、あかくすんな。
……それにしても、白に赤はよく映えるな。
いや、だから。
「……解説ありがとう。まぁ、もとはといえば俺が変な事言ったのが……いや、もうやめようぜ……」
これ以上の発言はお互いの傷口に塩を塗りたくるのと同じだ。
なんだか居心地が悪い。
俺がそう言うと、スギサワは赤く染めていた頬をさらに赤くした。
「あ、あの……うん。そうだね。ごめんね……?」
「いいっていいって。こっちこそ、変なこと言って悪かった」
「……ありがとう」
そう言いながらスギサワが笑った。
どくんと心臓が跳ねる。
鼓動が鼓膜に響く。
あー……くそ。
知らない間に始まったホームルームは、知らない間に終わっていた。
やっぱり話は馬耳東風。どうしたものか。まったく。
「そ、それじゃバイバイ……ナオフミ君」
「あぁ……また明日」
ぞくぞくと帰宅やら部活やらへ向かうクラスメイトに混じって、スギサワも俺に小さく手を振ってから教室を出て行った。
さっきよりも強さを増した熱気が窓の向こうから吹き込んで、この中を歩いて帰るのかと、また憂鬱になった。
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