放課後デプレッション

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 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。 そんなやりとりをしている間にも、時間は一方向に流れていくのみだ。 次は現代史。 現代史のカトウは自分が教室に入る際に教室内がざわついていないとその日の授業が説教から始まる鬱陶しい教師だ。 その説教というのが嫌味全開でこれまた鬱陶しい。 触らぬ神に祟りなし……この教師の授業中は皆例外なく、慎ましい姿で各自の席に着き、待機している。  午後の陽気はとかく鬱陶しい。 特にこの季節の熱光線は殺人的だ。 窓側から二番目の席にいる俺の背中には容赦なくその熱光線が突き刺さる。 加えて、いくら上を脱ぎYシャツになろうとも、学生服は黒い。 光を吸収し、暑さを留めてしまう。 俺はズボンを膝が出るくらいまで捲くった。 更に風に靡くカーテンの先と先を結んで、光が漏れ出さないようにする。 「あっついよね、今日」 カーテンを結び終え席に着いたと同時に鈴音のような声でぽそりと声を掛けられた。 隣の席のスギサワだった。 その声に思わず反応し彼女の方を見ると、熱いと言う割にはあまり熱そうに見えなかった。  彼女はカーテンを閉じても、僅かに身体に陽の光が当たっていた。 学校中の女子が髪を色鮮やかに染色している中で、彼女の黒髪はかなり貴重だと勝手に思っている。 実際は他にも染色せずにいる奴はいるが、なんというか、彼女ほど綺麗な黒髪はないのだ。 光が反射したそれは、より一層眩しくて、俺は思わず目を細めて返事をした。 「……正確には今日も、だろ。ホントにな。普段ならその席は最高だろうけど、この時期だけはつらいな」 言うと、彼女は柔らかく笑って首を振った。 「ううん、熱い分風が涼しいの。ナオフミ君の所には、風、吹いてこない? もう少し窓開けようか?」 「いや、くるけど。ずっと吹いてるわけじゃないし」 「そう? ……まぁでも、心配があるとすれば、陽にあたり過ぎて、日焼けするのはやだなぁ」 そう言ってスギサワはクスクス笑う。  何故だか俺はスギサワと話すのが苦手だ。 くすぐったい。 彼女の持つ独特の雰囲気がだめなのだろうか。 人と話をする時は相手の目を見て話すものだが、彼女にだけは顔を逸らしてしまう。
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