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あぁあぁあぁああ――。
授業中、俺は自分が吐いた恥ずかしい台詞を頭の中で何度も巡らせていた。
どうしてあんなこと言ったんだ。
あれじゃあただの変態だ。
授業も全く手につかない。板書もままならないほどだ。
おいやべぇぞ、もう黒板折り返しやがった。
「――ふふ」
小さく、本当にに小さく短い吐息が、夏の蒸し暑い風に混じって俺の耳を撫ぜた。
弾かれたように横を見る。
風が吹いてきたその方角には、一人しかいない。
スギサワが、笑っていた。
その笑顔を見て、顔がどんどん熱くなっていく。
熱い。日焼けしてしまいそうだ。
「おいスギサワ。今どこか面白いところあったか」
静かな教室では、僅かな音さえ異音として認識される。
鬱陶しいこの教師は待ってましたとばかりにスギサワを指摘する。
「い、いえ……えと、あの……」
普段説教などから程遠い彼女は体を硬直させ、小さな声で狼狽えていた。
スギサワは目立つタイプの奴じゃない。
こんな晒し者の状態は慣れていないんだろう。
「すいません、今僕のお腹が盛大になってしまって……な?」
気が付いたら、そんな事を言っていた。
誰がって、俺が。
……え、 俺が?
「……え、ええと……はい……すいません」
隣でスギサワがおどおどながらもそう答える。
とりあえずは一人でスベることはなくなったようだ。
察しのいい奴でよかった。
「だから言ったろナオフミー、弁当だけにしとっけってさー!」
「そうそう、育ち盛りだからって更に二つもパン食べちゃってさー!」
「そもそもお腹弱いのに牛乳なんて一緒に飲むからー」
「でも昼はつい牛乳買っちゃうんだよなー」
タクミ、アキラ、ユタカの三人が好き勝手言い始める。
直ぐに教室が笑い声で溢れた。
「うるさい、黙れお前ら! ったく……佐々木、腹が痛かったら我慢せずトイレにいってこい」
「……はい、すみません。失礼します」
静かになった教室の後ろから逃げるように外に出た。
あぁああくそマジかぁ恥ずかしいぃいい……!
授業中のトイレとか……! しかも確定でおっきい方だってクラス全員に……。
信じらんねぇ……どうしてこうなった!?
なんで余計なこと言っちまったんだ俺……。
……幸い、面倒で鬱陶しいカトウの授業だ。
授業が終わるまで適当に時間潰して戻るか。
ホント、どうかしてる。
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