1人が本棚に入れています
本棚に追加
随分と気まずい六限を、天井に無数に空いている、目に見えなくもない窪みを数えることでなんとか乗りきった。
「あ、イケメンのナオフミ君だー」
「あ、救いのヒーローだーあ痛っ!?」
「……うっせ。後にしろ後に」
ホームルームまでの間、俺はさんざんこけにされ。
まぁ騒ぎ立てるアキラにはチョップをしておいたので別にいいのだが、教室中の生暖かい視線。
視線。視線。
集団というのは恐ろしい。
「あの……! ナオフミ……君」
色々あってうんざりしていると、声を掛けられた。
スギサワだった。
「……ん、どした」
ぶっちゃけた話、ちょっと気まずいから今日はスルーしたかったんだが。
出来る限り、普段通りになるように声を掛ける。
スギサワは胸の前で手を握りながら、少し俯いていた。
「あ、あの……ごめんね、私のせいで……」
申し訳なさそうにスギサワは俺にそう言った。少なからず落ち込んでいるようだ。
……落ち込んでるときはこんな風に、眉毛がへの字になるんだな。
じゃなくて。
「……あ、あぁ。いいよ気にしなくて。怒られるのはいつものことだし」
どうも、動揺を隠すのは難しい。
どこかぎこちない返答となってしまう。
まぁ、怒られる理由って言うのは俺自身が何かやったとかじゃなくて、他三人のせいでなんだが。
しかも、なんでか俺が一番怒られる。
俺はなにもしてないのにその場にいたからって理由だけで。
理不尽だよ、世の中ってやつは。
どうしたものか。
……まぁ、止めないのが悪いのか。
監督不行き届きってことか。
監督はいつだって責任を負うものだしな。
最初のコメントを投稿しよう!