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「言いたいことは分かったよ。髪も派手なの辞めるし、ピアスは外す。金稼ぎたいんだ。海水にばっかり迷惑かけて生きられないだろ?」
言い終わらないうちから、自分の耳に手を持って行き、ピアスを引き抜いた。
「俺も海水さんの為に、お前を信じるし、頑張ってほしい」
要の言葉ににかっと歯を見せた流依が要の肩をバシッと叩いて「分かってるって! お義兄さんっ」とそのまま勢いで肩を組んだ。
要は密着されて暑さが増して、逃れようと流依を押しやった。
「チューしてやろうか? ほらほら、チュー」
相変わらず流依はふざけ倒す。
二人はじゃれ合った子猫のように絡まりながらコンビニまで歩いて行った。
二人を照らす太陽がじりじりと昇っていく。
しかしもうすぐ夏は終わる。
蝉が懸命に夏を引き留めようと鳴いているが、要は酷く満足していた。
夏が終わる。
いつになく密度の濃い夏だった。
「コンビニ行ったらアイス買って、おにいさぁーん」
とうとう買ってやったペットボトルを中身を飲み干してしまった流依が懇願する。
要は「たかるなよ」とぼやきながら、なんのアイスを買おうか考えていた。
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