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「最近の警察官って、素敵な人が多いんだね。穂積と一緒に来た彼……井上、さんだっけ? あの彼も、中々ハンサムだったし」
大輔を思ってホッコリしていた穂積だが、兄のその言葉に心が荒れ出す。
「そう、かなぁ。顔、濃くない?」
「え? それ、お前が言う?」
兄が楽しそうに噴き出し、穂積はなにも言い返せなかった。井上とは別系統だが、自分も――兄も――十分、この日本では顔が濃い方だろう。
ムッとする穂積に、泉がおかしそうに目を輝かせる。
「ねぇねぇ、もしかしてあの刑事さんと、なにかあった?」
本当に兄は侮れない。いつも容易く見抜かれてしまう。他人には、わかりにくいと言われる穂積の本心を――。
「香って、意外となんでも顔に出るよね。そんなところが可愛いんだけど、どうしてお前は、中々良い人ができないんだろうねぇ」
「もう……俺のことはいいよ。それより兄さんこそ、浮かれすぎじゃない? 久しぶりに川原さんに会って」
「あれ、バレた? だって川原さん……全然変わってないんだもん。そりゃ、ドキドキしちゃうよ」
泉は、恋する乙女のように顔を綻ばせた。弟の穂積は、呆れ返った。
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