文化祭の姫君

2/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「旧校舎で他校生徒と喧嘩? わかったすぐに警備委員を向かわせよう!」 「お化け屋敷で迷子になった子供が? 職員室に親御さんが待機中だ!」 「テレビの取材? 正門近くに校長がいる。対応してもらえ!」  暗い部屋の中で無数のモニターを睨み、無線を握りしめ、次々に指示を飛ばす眼鏡の女子生徒。  彼女こそ『文化祭の姫君』だ。  これまでに私立黒森ヶ丘学園の中等部高等部六年間すべての文化祭を統括し、大成功に導いてきた功労者である。  彼女にとって文化祭を運営する上で重要なこと。  それは半年以上前から委員会を組織し、綿密な計画の元、準備を進めていく事でも、花火、キャンプファイアーなどの火気を扱うに当たっての安全管理、行政への許可申請、父兄、教員への根回しなどなどでもない。  何よりも大事なのは期間中のトラブル対応だ。  すなわち生徒たちが起こす乱痴気騒ぎ、他校生徒との喧嘩、飲食屋台での火の不始末、悪質な来客による置き引きや痴漢などなどの問題を、監視し、事前に発見し、水際で防ぐことこそが肝心。  文化祭では何が起こるか分からない。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!