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オバケよりも、生きている人間が怖い。
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その日、私たちが観に行ったのは今期話題のスプラッタムービィでした。
学友であるマリアさんのチョイスだったのですが、血臭まで漂ってきそうな凄惨極まる画(もちろんR指定)は、私などをすっかりグロッキーにしてしまう完成度でした。
彼女はなんと、そんな状態の私を焼肉に連れて行くという凶行に及んでくれたのですが、なにか恨みでもあったのでしょうか。
もちろん食指は一切、動きませんでしたとも。
生肉。
とても見ていられませんでした……。
すっかり食欲を無くしている私を前に、マリアさんはおいしそうに肉を頬張りながら微笑んで言うのでした。
「昔から、血とか内臓といったグロテスクなものを見ているとお腹がすいてしまうのです。私」
そういえば映画館でも、やたらと誰かのお腹の音が聞えていたような気がしていましたが、まさか隣の人だったとは。
しかし、なんなのでしょうかその癖は?
どういう意味で、どういう経緯でできたものなのでしょう。
学校でも目を引く、貴族のご令嬢のように綺麗な人なのに、残念美人なマリアさんです。
そして彼女は、物憂げな瞳をして語るのでした。
「もしかしたら私は……、人喰いの素質があるのかもしれませんね」
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