一夜

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目を開くと、そこには闇。彼は重い瞼を持ち上げカーテンの方に眼を向ける。それには黒が滲み、まだ夜半のようだ。彼は枕元に置いてある腕時計を見る。針は零時を指す。おかしい。彼は時計が壊れていると思い隣にある携帯のディスプレイを光らせ時間を確認する。零時。彼はベッドから起き上がり、足を組んで座り手で頭を抑える。 どういうことだろうか。彼は考える。女と別れて家に着いた時にはすでに零時を過ぎていたはず。ある程度の時間を眠った感覚も残っている。それなのに、まるでこの世界の時計の針は進んでいない。まさか一日寝てしまったのか。彼は携帯で日付を見る。十月十三日。やはり変わっていない。 彼は落ち着こうと居間に出て水を飲む。部屋の中は暗く静か。その中から、玄関の扉が二度ノックされる音を彼は耳にする。微かな音、でも、確かに彼の耳朶を揺らす。こんな時間に誰だろうと彼は思う。もしかして、彼女が戻ってきたのだろうか。彼は玄関まで歩き、扉を開く。 誰もいない。
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