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今の話は、どういうことなのだろう。
結婚前に付き合っていた女性のことが、忘れられない。
その女性は、私のことだと思ってもいいのだろうか。
いや、でも私を裏切った彼のことだから、私以外にも騙していた女性がいた可能性も十分あり得る。
それに万が一、忘れられない相手が私だとしても、彼と私の関係がこれ以上深まることはない。
それだけは絶対に、あってはいけないのだ。
「あ、霧島。ちょうど良かった。今いい?」
お客様との打ち合わせを終えてスタッフルームに戻ってきた霧島くんを、主任が呼び止めた。
次回の朝日さんとの打ち合わせに参加してほしいと伝えると、彼は思いっきり嫌そうな顔をして私に視線を移した。
「……永里さんと朝日さんと僕の三人で、ですか?」
「そう。まぁ、そんな堅苦しく考えなくてもいいから。朝日も、プランナーの立場からの意見をいろいろ聞きたいんだよ」
霧島くんは終始嫌そうな顔を見せながらも、渋々承諾してくれた。
そして主任が席を離れた途端、彼は溜め息混じりに口を開いた。
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