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「正直、気乗りしないんですけど。俺、邪魔じゃないです?」
「邪魔なわけないじゃない!……変なこと言わないでよ」
「どうでもいいけど、目、赤いですよ」
「え……」
「泣かされたんですか」
霧島くんは、妙に勘が鋭い。
他人に興味はないくせに、他人のことをよく見ている気がする。
朝日さんからの思いがけない言葉のせいで、頬を涙で濡らしてしまったけれど、目が赤くなっていることには自分でも気付いていなかった。
「多分……目にゴミが入っただけだから」
「眼鏡してたら、ゴミなんか入らないと思いますけど」
「……」
「もう少し、嘘上手くなった方がいいですよ」
「……嘘じゃないし」
小さく抵抗すると、普段愛想など全くない霧島くんが、ほんの一瞬だけ笑顔を見せた。
何故、部下にこんなことを言われなくてはいけないのだろう。
彼の視点から、私はどんな上司に見えているのだろうか。
少しだけ、気になった。
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