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その翌週。
私と霧島くんは、朝日さんが勤めている海堂出版を訪れた。
予定では朝日さんがこちらを訪れる手筈になっていたのだけれど、彼の都合で急遽打ち合わせ場所が変更されたのだ。
「急に予定が変更になってしまって申し訳ない。霧島くんに会うのは久し振りだね。今日は来てくれてありがとう」
「お久し振りです。僕で良ければ、どんなことでも聞いて下さい」
私の隣で、霧島くんが営業スマイルを振りまく。
確か霧島くんは、朝日さんのことが苦手だと前に言っていたはずだ。
それでもこんな人懐っこい笑顔を見せることが出来るのだから、彼は仕事とプライベートを完全に切り分けられるタイプなのだろう。
若いけれど、プロ意識を持って仕事に取り組んでいる。
それは誰もが出来るように見えて、意外と難しいことだったりする。
「何ですか、永里さん」
「え?」
「視線が痛いんですけど」
「あ……ごめん、つい」
つい、普段見ることの出来ない霧島スマイルに見入ってしまった。
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