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時計を見ると既に夜の九時を回っていた。
あと三時間でミスの修復を終わらせ、データを送信しなければいけない。
間に合うか、間に合わないか、ギリギリのラインだ。
「それ、間に合うんですか」
「どうにかして間に合わせるから大丈夫。霧島くん、今日は本当にありがとね。お疲れ様」
早く修復作業を再開したくて会話を中断しようと試みた。
すると霧島くんは、予想外の行動に出た。
私の隣の席に、座りだしたのだ。
「手伝います」
「え……そんな、いいよ大丈夫だから……」
「一人でやって、本当に終わるんですか。このデータ、送信前に全部見直してたら今夜中なんて無理だと思いますよ」
「……」
悔しいけれど、霧島くんの言う通りだ。
送信前にする最後のチェックは絶対に欠かせない。
またミスがあれば、もう取り返しはつかなくなってしまう。
「俺が印刷してチェック進めていくんで、永里さんはそっちに集中して下さい」
「でも……っ」
「早く。終わらなくてもいいんですか?」
「……っ、お願いします」
救いの手だと思った。
本来なら自分のミスが関係することで部下に頼りたくはないけれど、今回ばかりはこの有り難い申し出を断るわけにはいかない。
今日は霧島くんに感謝することばかりだ。
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