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でもすぐにその柔らかい笑顔は消えてしまった。
いつも今みたいに笑っていれば、少しは可愛げがあるというのに。
「霧島くんとこうやって食事するの、初めてだよね。お酒、強いの?」
「強い方だとは思いますよ。今まで潰れたことはないですね」
「そういえば職場の飲み会でも、霧島くんが酔っ払ってるとこなんて見たことないかも」
「職場の飲み会で酔える人とか、ある意味尊敬しますよ」
もっと、気まずくなるかと思っていた。
会話がなかったらどうしようと若干不安だったけれど、その心配はなかったようだ。
私に気を使ってくれているのかもしれない。
今日の霧島くんは普段よりも口数が多かった。
思っていたよりも楽しい時間が過ごせて、珍しくお酒も進む。
そして完全にほろ酔い状態になった頃に、鴨せいろが二つテーブルまで運ばれてきた。
「わぁ、美味しそう……」
運ばれてきた更科そばに箸を伸ばした瞬間、霧島くんは突然私に疑問を投げかけてきた。
「そういえば永里さんって、何で眼鏡かけてるんですか」
「え?」
「だってそれ、度入ってないですよね」
「……」
見抜かれていたことに、私は驚きを隠せなかった。
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