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「どうして……わかったの?」
「この間永里さん残業して寝てたとき、眼鏡外してたじゃないですか。あのとき、眼鏡のレンズずいぶん薄いなと思ったんで」
「え……」
この間、残業して寝てしまったときのことを思い出す。
確かあのとき、眠っていた私の体にはブランケットがかけられていて、栄養ドリンクがデスクの上に置かれていた。
でも、何故霧島くんがあの残業のときに眠ってしまったことを知っているのだろう。
その疑問が頭に浮かんだ瞬間、私は言葉を発していた。
「あの日霧島くん、定時で帰らなかった?」
「あー……、そうですね。すみません、今言ったこと全部忘れて下さい」
霧島くんは早口でまくしたて、目の前の鴨せいろを食べることに集中し始めた。
「もしかして……あのとき栄養ドリンク置いてくれたのって、霧島くんだったの?」
あの日の翌朝、出社してきた広報室の同僚たちに聞いてみたけれど、私の体にブランケットをかけてくれた人は見つからなかった。
すると霧島くんは、バツが悪そうに私から視線を逸らした。
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