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普段毒ばかり吐くから冷たい人なんだと思っていたけれど、もしかしたら意外と優しい人なのかもしれない。
「霧島くんだったんだね……ありがとう」
「その話、もうやめましょう。早く食べて下さい」
照れくさいのを必死に隠しているところが少しだけ可愛く見えて、思わず笑ってしまった。
今日、霧島くんを食事に誘って良かったと心の中で思った。
部下の意外な一面を知ることが出来たから。
普段あまりこうして職場の人と食事に行くことはないけれど、たまにはこういう機会を作るのもいいかもしれない。
霧島くんオススメの鴨せいろを食べた後、日本酒をもう一杯だけ飲んで店を出た。
宣言通りご馳走した私に対して、霧島くんは素直にお礼を告げた。
「ごちそうさまでした。何か、すみません。俺、別に大したことしてないのに」
「ううん、本当に助かったから。それに美味しい蕎麦屋も教えてもらえたし」
終電の時刻はもう過ぎてしまった。
タクシーが拾える道まで出ようと歩き出した私を、霧島くんが呼び止めた。
「永里さん」
「何?」
「もう一軒、行きません?次、俺が奢るんで」
「え……」
完全に帰宅する気でいた私は、予想外の発言少し戸惑ってしまった。
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