心を許してしまった瞬間

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蕎麦屋にいたときから、霧島くんは私よりも確実に飲んでいるお酒の量が多い。 それなのに、顔色一つ変えることなく涼しい顔でカクテルに口をつけていた。 反対に私は、徐々にほろ酔いの域を超えてきている。 蕎麦屋で飲んだ日本酒が、だいぶ身体を火照らせていた。 でも、部下の前でみっともなく酔っ払うわけにはいかない。 「あの人と、どういう関係なんですか」 「え?」 「朝日さん。ただの仕事の関係じゃないですよね」 急に核心を突かれ、胸の鼓動が速くなった。 霧島くんは本当に、他人のことをよく観察している。 「打ち合わせ中の永里さん見てたら、誰でも気付くと思いますよ」 「……私、どんな感じだった?」 「朝日さんのこと意識してんの、バレバレでした。普段と声とか口調違ったし」 「……」 朝日さんとの過去は、誰にも話したことはない。 小百合には、初恋がトラウマになっていると相談したことはある。 でも、その詳細は口に出せなかった。 私の心の内だけで、留めてきた記憶。
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