116人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
蕎麦屋にいたときから、霧島くんは私よりも確実に飲んでいるお酒の量が多い。
それなのに、顔色一つ変えることなく涼しい顔でカクテルに口をつけていた。
反対に私は、徐々にほろ酔いの域を超えてきている。
蕎麦屋で飲んだ日本酒が、だいぶ身体を火照らせていた。
でも、部下の前でみっともなく酔っ払うわけにはいかない。
「あの人と、どういう関係なんですか」
「え?」
「朝日さん。ただの仕事の関係じゃないですよね」
急に核心を突かれ、胸の鼓動が速くなった。
霧島くんは本当に、他人のことをよく観察している。
「打ち合わせ中の永里さん見てたら、誰でも気付くと思いますよ」
「……私、どんな感じだった?」
「朝日さんのこと意識してんの、バレバレでした。普段と声とか口調違ったし」
「……」
朝日さんとの過去は、誰にも話したことはない。
小百合には、初恋がトラウマになっていると相談したことはある。
でも、その詳細は口に出せなかった。
私の心の内だけで、留めてきた記憶。
最初のコメントを投稿しよう!