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「実は彼とは……昔からの知り合いで……」
「元彼ですか」
「……っ」
「当たりだ」
霧島くんはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
さすがにここまで読まれてしまうと、何も言えなくなってしまう。
「すごいですね。仕事で再会するなんて」
「本当にね。まさか、再会するなんて思わなかった。……もう二度と、会いたくなかったのに」
気付いたら、口から零れ落ちていた。
きっと、酔っているからだ。
飲み過ぎてしまったせいだ。
だから私は、今にも泣き出してしまいそうな気持ちを抑えながら、霧島くんに弱音を吐いてしまうのだ。
「嫌な別れ方でもしたんですか」
「……別れの言葉さえ、聞かせてもらえなかった」
私はそこから、彼との過去を話し始めた。
親友の小百合にさえ話していないことを、何故か霧島くんに打ち明けていた。
彼に二股をかけられていたこと。
突然、音信不通になったこと。
その後、子供が出来たから結婚すると兄の口から聞かされたこと。
それでも、彼を完全に憎みきれずにいること。
本当は、ずっと誰かに聞いてほしかったのだろうか。
胸の内で必死に抑え続けてきた、未練の言葉を。
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