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長らく恋から遠ざかっている私がそういうことを言うと、冗談に聞こえないらしい。
「いいじゃん。この際、もう一度好きになってみたら?」
「……変なこと言わないでよ。ていうか、あり得ないし。相手、結婚してるから」
「なんだ既婚者なの?それは論外だね。不倫なんか、時間のムダだからやめておきなよ。樹みたいなのが不倫にハマったら、ヤバそうだし」
妙に説得力ある言葉に圧倒されていると、小百合はサラリと爆弾を落とした。
「経験者が言ってるんだから、信じなさいよ」
「え!?経験者って……小百合、不倫してたの?」
「つい最近までね。やっと清算したところ」
独身の女同士の飲みに、色気などいらないのに、小百合はやけに色っぽくジントニックを飲み進めていく。
小百合が不倫をしていなんて、一切知らなかった。
彼氏がいるのはわかっていたけれど、まさかそれが不倫だったなんて。
「不倫なんて、誰にも言えないし。結局さ、男って狡いんだよね。奥さんと別れる気ないくせに、愛してる、そばにいてほしいって口ばっかり」
男は狡い。
その言葉に、私は激しく同意した。
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