心を許してしまった瞬間

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「あの人、そんなに魅力的な男には見えないですけどね」 「でも……昔からモテてたよ」 「モテる男がいい男だとは限らないじゃないですか」 確かにそうかもしれない。 でもきっとプランナーの子達がこの霧島くんの発言を聞いたら、一斉に立ち向かってくるだろうと思った。 「じゃあ例えば霧島くんなら……どんな女性がいい女だと思う?」 私の問いかけに、霧島くんは意外にも即答で返してきた。 「心が綺麗な人ですかね」 「心が綺麗って……そういうの、わかるものなの?」 「少し話せば大体わかりますよ。俺は外見より内面重視なんで。外見ばかり取り繕う女には興味ないです」 「そうなんだ……」 「昔から、バカみたいに真っ直ぐで純粋なヤツのことは放っておけないんですよね」 軽く笑みを零して、霧島くんはもう何杯目かわからないカクテルに口をつけた。 そんな彼を見て、なんとなく気付いてしまった。 きっと今、彼の頭には、誰かの顔が浮かんでいるのだと。
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