心を許してしまった瞬間

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「まぁ、奥さんがいるって知ってて好きになった私の自業自得でもあるんだけどね。やっぱりさ、人のモノ奪って幸せになろうなんて甘いのよ」 「……」 小百合の言葉が、胸に突き刺さっていく。 甘い言葉で女性を誘惑する、そういう狡い男が最も悪いと思う。 でも、その誘惑に引っかかってしまう女にも一切非がないとは言えないのかもしれない。 私は彼に騙されていた。 彼が別れの言葉もなく私の前から消え去ったあのときから、私は一度も恋をしていない。 好きになれそうな人はいた。 有り難いことに、好きだと言ってくれる人もいた。 でも、どうしても彼以外の男性を身体が受け入れることが出来なかった。 肌に指先が触れるだけで気分が悪くなってしまい、結果的に恋に発展することはなかった。 あの人とは、何度も身体を重ねたのに。 いつまでもこのままではいけないと自覚はしている。 でも、自然と表れてしまう拒絶反応がどうすれば消えてくれるのかわからずにいた。 自分が被害者意識でいることがいけないのだろうか。 裏切られたことばかり根に持って、自分を変える努力は何一つしていない。 だから、私はいつまで経っても、あの人の影に支配され続けているのだろうか。
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