304人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ……私、そろそろ行きますね」
「あ、はい!お話出来て楽しかったです」
「私も……楽しかったです。誘ってくれてありがとうございました」
礼を言い二人に頭を下げ、立ち去ろうとしたとき。
彼女に呼び止められ、振り向いた。
「永里さん。冬汰のこと……よろしくお願いします」
「……」
それは、職場の先輩としてという意味だろうか。
それとも、別の意味なのか。
彼女は、私が恋をしている相手が誰なのか、とっくに気付いているような気がした。
「……はい」
一言だけそう口にした私の心は、この店に来る前よりもずっと軽くなっていた。
叶わない恋にも意味はあるのだと、素直に思えた。
たとえ想いが伝わらなくても、想い続けることは罪ではない。
限界だと思うまで諦めるな。
私はまだ、何もしていない。
最初のコメントを投稿しよう!