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「棗くん、こちら永里樹さん。冬汰の職場の先輩なの。あ、永里さん!こちらが私の旦那さんの棗くんです」
「初めまして永里です」
「どうも。初めまして梶真です」
おそらく彼は私と同じくらいの年齢だろうか。
無難な挨拶を終わらせると、彼は霧島くんのことを口にした。
「永里さん、今日は出張で来てるんだって。偶然会えたから嬉しくて、お茶に誘っちゃった」
「ていうか、あのクソ生意気な男が部下だと大変じゃないですか」
霧島くんに対して微妙に棘を感じるのは私の気のせいだろうか。
「いえ、そんなことは……霧島くんは優秀ですよ。……確かに性格に難はあるかもしれませんが」
仕事は完璧にこなすけれど、職場の仲間へ向けるあの冷たい視線と淀みなく吐き出される毒舌は、難があるとしか言いようがない。
「気の毒ですね」
どう返せばいいのかわからず苦笑していると、残業を終えた主任からメールが届いた。
あと十分ほどで会社を出れるらしい。
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