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霧島くんに見つめられながら作った料理は、思ったより仕上がるまでに時間がかかってしまったけれど、なかなか良い出来になったとは思う。
「ごちそうさまでした」
幸せな時間は、あっという間に流れていく。
時計を見ると、既に夜九時を過ぎていた。
まだ一緒にいたい。
一時も、離れたくない。
だって、やっと会えたのだから。
「樹さん」
「何?あ、これ洗っちゃうね」
テーブルの上に並べられていた食器類を片付けようと手を伸ばしたとき。
その手に、霧島くんの手が重ねられた。
「そんなの後で俺がやりますから。それより、こっち」
「わっ」
軽く引き寄せられただけで体勢を崩し、みっともなく霧島くんに抱きつく形になってしまった。
「ご、ごめん!大丈夫!?どこかぶつけてな……」
「樹さんにしては、結構大胆ですね」
「違っ……!」
一旦体を離そうとしたけれど、霧島くんが私を抱きしめる力の方が強くて、離れられなかった。
「俺に会いたかった?」
「……っ」
「寂しかったですか」
会いたくないわけがない。
寂しくないわけがない。
そんなこと、私と同じくらい霧島くんもわかっているはずだ。
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