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彼は私の身体の至る箇所に、すぐには消えそうもない痕を付けた。
交際が始まってから今日までの間で、彼が痕を付けたのは初めてのことだった。
「うわ、こんな所にまで……」
「いいじゃないですか。服着れば他人からは見えないんだから」
「首には付けてない?」
「お望みなら付けてあげますけど」
「……遠慮します」
一通りの行為を終えた頃には、かなり遅い時刻になっていた。
そろそろホテルに戻らなければ、フロントのスタッフからおかしな詮索をされるかもしれない。
こういうときだけは、ホテル業界に勤めていることの窮屈さを感じる。
このままここに留まるわけにもいかず、仕方なく脱ぎ捨てていた服を着始めた。
「樹さん。次は出張以外で会いましょう」
「え?」
「やっぱり、時間制限なく一緒にいたいんで。次は俺が札幌行きますから」
「……」
こんなにも素直で、こんなにも甘い彼が見られるのなら、遠距離恋愛も悪くないなんて思えた。
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