エピローグ

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「霧島くん」 「何?」 「好き。……大好き。ずっと、好き」 普段会えないからこそ、会えたときには気持ちを伝えたくなる。 互いの気持ちは互いが一番理解しているけれど、それでもたまにはこうやって、言葉にしたくなるときもある。 「樹さん。それ、帰り際に言うの反則だから。わざとですか」 「わざと?違うよ、そんなんじゃなくて……」 「遠距離も、意外と悪くないですね」 「え?」 私の耳元で、霧島くんが囁いた。 「俺、今、相当幸せ感じてます」 彼がくれたその言葉は、好きだと返されるよりも、嬉しいものだった。 幸せを感じる瞬間は、人それぞれ違う。 皆が皆、同じことに幸せを感じるわけではない。 むしろ、独りよがりなことの方が、多いのかもしれない。 それでも今、私たちはこうして同じ瞬間を幸せだと感じていて、同じ気持ちで寄り添い合っている。 こんな幸せは他にないと思った。
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