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空港に到着後、すぐに出張先でもある東京のホテルへと向かった。
今日は霧島くんは休みが取れず、ブライダルサロンで勤務している。
私が向かう先は別の部門だけれど、仕事を終えて帰り際にサロンへ顔を出すことが出来た。
普段の仕事中はもちろん仕事のことを第一に考えるようにしているけれど、今日に限っては霧島くんのことを一番に考えてしまっている。
でも、今日くらいはそんな自分を自分で許してあげたい。
「お疲れ様です」
サロンの扉を開くと、真っ先に私に声をかけてきたのは主任だった。
「あら、永里さん。そっか、今日出張で来てるんだったわね。仕事はもう終わったの?」
「あ、はい。あの、私が出張で来てること知ってたんですね」
今回の出張は、ブライダル部門には全く関係のない仕事だ。
誰が行っても良かったのだけれど、なかなか霧島くんに会えない私に気を使ってくれたのか、前島室長が私を選んでくれたのだ。
だから、ブライダルの主任には敢えて東京に行くことは伝えていなかった。
それなのに知っているということは、前島室長から事前に連絡がいっていたのだろうか。
「あぁ、霧島がね、いつも無愛想なくせにここ最近変に愛想がいいから何かあると思って問い詰めたのよ」
「え……」
「そしたら、あなたが来るって言うから。霧島と交際してるんだってね」
「……」
まさか、こちらでも噂になっているとは思いもしなかった。
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