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「知ってたんですね……」
「当然。私、前島くんと同期なの」
「……」
札幌へ戻ったら、口の軽い前島室長に一言きつく文句を言っておこう。
「霧島なら今お客様と打ち合わせ中だからまだしばらく時間かかると思うけど」
「そうですか、わかりました」
もともと仕事を終えたら今日は一緒に外で食事をする約束をしている。
ホテル内で待つのも目立つ気がしたため、外に出てすぐ近くにある本屋で霧島くんの仕事が終わるのを待つことにした。
早く、会いたい。
何度も腕時計で時間を確認してしまう自分がいた。
「樹さん」
「……っ」
もう何度目かわからないほど、時計に視線を移したときだった。
私の名前を呼ぶ声が聞こえ、私はその声に瞬時に反応し振り向いた。
「だいぶ待たせてすみません」
霧島くんだ。
本物だ。
離れた日から今日まで、何度も何度も夢に見た。
いつものポーカーフェイスがやけに懐かしく感じて、泣きそうになってしまった。
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